(いい日でありますように)
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あやしあかやし:2
2012.02.21 Tuesday
今日は久方ぶりに六法片手に法規集を読みました。
途中うと、っとしたのは秘密です。でもきっとばれてる。
今日は左近と昌幸です。この組み合わせがすごく好きなのです。書きたいところだけ書いてるんで意味不明ですみません…。
よろしければ「続きを見る」からよろしくお願いいたします。
主とはぐれ左近はふらふらと人気のない路地裏をさまよっていた。
しかしそこに寂寥感はなく、いっそ晴れ晴れとした気分であった。気分屋の主は左近にめっぽう厳しかったからだ。厳しいというよりは理不尽で横暴な男であった。
ふんふん、と二股に分かれた尾っぽを振りながら、鼻歌交じりに足取り軽く歩いていると、その体が急に宙に浮いた。驚いて自分を抱き上げる腕から上へと視線を挙げて見てみれば、左近をがっちりと捕まえているのはいかにも胡散臭そうな若い男であった。妖怪と呼ばれる猫又の左近は人間には見えないはずにも関わらず、男と左近の目が合った。にんまりと男は笑う。そしてそのまま左近はガラス張りのゲージに放り込まれることとなった。
動物の様々な鳴き声と獣のにおいに左近はうんざりしていた。漸くひとり悠々自適に暮らせると思いきや、狭い檻に閉じ込められ、味もそっけもない餌を毎食毎食与えらえ、辟易としていた。男女のカップルや小さな子供が時折ガラス越しに左近のほうを見ては首をかしげる。自分に注がれているわけではないが、多くの視線が左近の気分を降下させ、むっすりと左近はそっぽを向いた。
その時であった。どん、とガラスが叩かれて、左近はぴくりと耳を小さくはねさせた。しかしあえてそ知らぬふりをしていると、どんどんどん、と何度もたたかれる。大概にしろ、と無意識に顔を向ければ、アーモンドのように程よい丸みを帯びた目とかち合った。今まで見たこともないほど綺麗な造形をした人間だと左近の心臓がはねる。ふわりと瞼が和らいで、口元が弧を描く。微笑みを向けられることを期待した左近は、あっさりと裏切られる。
「あははははははははは!!!」
その人は大きく口をあけて腹を抱えて笑い始めた。どんどん、と拳でガラスを叩いて笑い転げている。
「超ウケる!なんだ此奴!猫又のくせに売られてやがる!!」
げらげらとその端正な顔に似合わない笑い方をする。
「傑作!!」
ぴきりと左近のこめかみに筋が浮かんだ。目じりに浮かんだ涙をぬぐってその人はペットショップの自動扉をくぐる。店主に何事か囁くと、店主は顔を真っ青にして左近と目の前のその人を交互に見て、そして深々を頭を下げた。そして鍵を手に左近のゲージの前に立つと扉を開けて左近を抱き上げたのだ。
「では、御代はこちらで」
「はい!本当にありがとうございました!これで今日からぐっすり眠れます!!」
左近の身柄はペットショップから美貌の人へとうつされた。腕に抱かれて左近は新しい飼い主を見上げた。抱かれた胸は凹凸がなく、男かと左近はちょっぴりしょんぼりしたものであった。顔は文句なしに上等で左近の好みにどストライクだったからだ。受けた恩は返さぬが恥と、連れられるまま左近は一軒の家に付いた。
「帰ったぞー」
どことなく弾んだ声に、とたとたと小さな足音がこたえる。
「おかえりなさい!ちちうえ!」
「おう、幸村、いい子にしてたか」
ほれ土産だ、と首根っこをつかまれた左近がだらりと差し出される。
とても愛らしい顔が左近の目の前にあった。彼によく似た子供だ。嬉しそうに両手がのばされ、左近の腹にまわる。両腕で抱えてやっとなほど、左近の体躯は猫にしては大きい。
「なんですかこのねこ!」
真ん丸の瞳が左近を映す。
「かわいくないです!」
笑った笑顔に似合わない辛辣な一言に、左近は怒りよりも先にしょんぼりと尻尾を下したのであった。
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